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2016年6月 2日

統合報告書は企業価値を高めることができるのか? (第2回)

前回、英国IR協会編纂の『IRベストプラクティスガイドライン(当ガイドライン)』は、機関投資家によるIRツールへの意向に基づいてまとめられているとお伝えした。英国企業の例を踏まえながら、機関投資家がIRツールに期待していることを紹介したい。

最初に、当ガイドラインが、アニュアルレポート(AR)と統合報告書(Integrated Report)をどのように扱っているかをお知らせしておかなければならない。結論から申し上げるとARと統合報告書は同等に扱われている。英国IR協会が毎年開催するベストプラクティス賞の中の「ベストAR賞」をみても国際部門に参加する企業の報告書はReport やIntegrated Reportと表記されている。

では機関投資家のARに対する期待とは何か? 当ガイドラインARセクションの冒頭に投資家・アナリストの視点から「ARの主な目的」として挙がっている以下6点がそれである。

1. 現状および潜在的な株主の教育と情報提供

2. 戦略の策定と、その遂行状況の報告

3. 当該期間の業績報告と、戦略および市場環境についての報告

4. 業績に影響を与えるリスクと要因の説明

5. コーポレートガバナンスに関する方針と経営の透明性の提供、 およびガバナンスにおける決定事項と事業の業績や戦略との関連性の説明

6. 法令・規則の遵守

これらをご覧になられてわかる通りもっともなことばかりだが、企業の実際の開示内容を見ると、機関投資家のニーズがはっきり見えてくる。特に4、5に記載されている点は日本企業の開示とは大きく異なる。

まず、「4. 業績に影響を与えるリスクと要因の説明」であるが、日本では有価証券報告書に事業リスク要因の開示がもとめられているが、その要因の説明までは求められていない。2015年にベストAR賞FTSE100部門を受賞したAviva plc社のAR2014では、「Risk and risk management」のタイトルのもと4ページ (P56-59)を使い、リスクの開示だけでなく、そのリスクを軽減するための対策まで開示している。

Aviva-AR2014_P58-59.pdf

Aviva AR2014 http://www.aviva.com/reports/2014ar/

FTSE250部門で受賞したCroda International Plc社のAR2014では、リスクのタイトルの下に「価値を守る」とサブタイトルを付け、リスクに対する企業の意思を明確に表しており、その後リスクの管理体制と14の主要リスクごとに事業への影響から対応策、当該年度の取り組みについて表形式で5ページ(P28-32)も割いて説明している。

Croda_AR2014_P30-31.pdf

Croda AR2014 http://www.croda.com/home.aspx?s=1&r=1172&p=8173

「5. ガバナンス」に関する開示については、日本でも2015年6月から日本版コーポレートガバナンスコードが適用されたが、英国では3年先立つ2012年にコーポレートガバナンス法が施行されており、英国企業は、ガバナンスに関する報告を役員の報酬報告とともに開示することが求められている。上に紹介したAvivaでは、ガバナンスセクションを設け、ガバナンスに関して20ページ、役員報酬に関して20ページを割いて開示している。Crodaでも、ガバナンスに20ページ、役員報酬に19ページを当てて詳細な説明を試みている。

英国会社法が役員報酬の開示を義務づけているが、役員個人の報酬まで事細かく開示することによって投資する側は役員のモチベーションの源泉がわかり、納得して投資できるであろう。

次回は、今話題の非財務情報について触れてみたい。

(株式会社ファイブ・シーズ 代表取締役 越智義和)

http://www.fivecs.co.jp/

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