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2016年4月 1日

日本株からアジア株を意識したIRへ

日本にいる我々は日本株に投資することに何の違和感もありません。投資家は個人、法人にかかわらず、パフォーマンスが期待できる市場に投資します。その意味では日本株への投資は日本株の株価上昇に期待しているからといえます。外国株に投資するファンドでは、当然のことながら、外国株の値上がりに期待しているといえます。または為替変動を加味した株価上昇を期待しているといえます。

同様に、海外の投資家から見た場合、日本株に投資するのは、日本株の株価上昇や為替変動などを期待しているからといえます。

国際取引所連合(World Federation of Exchanges)の統計(米ドルベースの時価総額)によれば、2005年末のアジア地域における東京証券取引所の比重は49%とほぼ半分近くを占めていました。しかし2015年末ではその比重は21%まで低下しています。その背景としては、①日本株の低迷、②他アジア市場の拡大、があげられます。実際TOPIX(東証株価指数)でみると、2005年末1649.76ポイント、2015年末1547.30ポイントと、終値で比較すると7%下落するなど、日本株のパフォーマンスは必ずしも良くありません。一方、他アジア市場をみると、中国市場(上海、深セン)や香港市場、インド市場、その他アジアの新興市場がシェアを上げていました。

日本株のシェア低下は機関投資家の調査・運用体制にも大きく影響しています。

これまで日本株がアジア株の半分近くを占めていたことから、海外の機関投資家では日本株を専門とする部署やチームを設けて調査・運用を行っていました。国際的な証券投資の運用パフォーマンスを測るためのベンチマークとして広く利用されているMSCI指数(米国のMSCI Inc.が算出・公表している)の中にも、MSCI日本、MSCI All Country Asia ex Japanなど、日本株とアジア株を分けています。

しかし近年の日本株の比重低下に伴い、日本株をアジア株に含めて運用することが増えています。そのため日本株だけを専門に調査するアナリストが減り、アナリストにアジア株と一緒に日本株も調査させる海外の運用会社が増えています。アナリストや運用担当者の銘柄選択の視点もそれにともない変化していきます。低成長の日本国内の市場シェアや競合関係などではなく、日本を含めたアジア市場の同業他社との比較や成長性、差別化要因などが調査のポイントとなります。

残念ながら日本株に対する海外投資家の不満は多いようです。一番大きいのは、英語圏以外の市場同様に、日本の上場会社の情報が現地の言語、つまり日本語偏重であることです。それとともに、多くの日本企業のIRの視点が日本国内または国内の競合会社に限定していることにあります。これは決算説明会資料などをみても歴然としています。

海外投資家を呼び込むためにも、今後は海外市場の動向だけでなく、競合するアジア企業を含めた情報提供が必要となってくると考えられます。アジア市場への進出により成長を目指そうとする企業であればなおさら、日本企業だけでなく、アジアの競合会社との比較を行うなどの工夫をすることが必要となります。IR活動の視点を今一度見直してみることが重要です。

(山川 学和)

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