アナリストのつぶやき

2017年2月 9日

貴社のIR活動は機能していますか?(第2回)

「どうしたらアナリストに取り上げられ、レポートを書いてもらえるか」

少なくないIRパーソンがこの悩みに直面したことがあるのではないでしょうか。IR担当に任命された際、IRの対象として最初に浮かび上がってくるのが証券会社のアナリストかと思います。しかし、大企業や相当の注目企業でない限り、待てど暮らせどアナリストからの取材依頼は来ないというケースがほとんどかと想像します。説明会を開催し、商品(工場)見学会を設定し、HPを充実させたとしても、なかなかその効果は見えてこないものです。IRパーソンとしては、当社に注目してもらえるアナリストをどうやって確保するか、と考えるのも自然な流れだと言えます。

こういった質問・依頼を受けた時、筆者はこう答えるようにしています。「特効薬はありません」。実際、そうなのです。アナリストが既にかなりの重労働であることはご存じの通りです。頻繁な企業取材を通して四半期ごとに業績モデルを更新してレポートを書き、同時に、世界中の投資家との面談もこなし、深夜まで働くことも多い職業です。それ故に、アナリストは「面白い」と思う企業があっても、(これ以上の業務負担増を懸念して)調査対象の追加拡大にはどうしても慎重となるのです。その結果として、筆者の調べによると、各証券会社のアナリストが調査対象としている企業数は、多いところでもせいぜい400~500社、外資系証券では150社前後という水準にとどまります。上場企業数は、日本取引所グループによると、2月8日時点で3,536社であるため、アナリストが見ている(レポートを書いている)企業は上場企業の10%あるかないか、というのが実態なのです。このカバー率の低さは、企業側の問題というよりも、アナリスト側の物理的な問題なのです。ちなみに、アナリストの書くレポートでは、必ず明確な論理とデータの客観性を基準に自身の投資判断を書かなければなりません。その内容はコンプライアンス面でのチェックを受ける必要もあり、一度調査を公式に開始すれば、継続的かつ連続性を持って意見を発信していく責務をコンプラ的にも道義的にも負うことになります。レポートは一回書いて「後は知ったことではない」というものでは決してないのです。

そこで、アナリストに物理的な制約を越えてもらうには、アナリスト自身に対象社調査の必然性を感じてもらうことが実は最も重要でかつ近道となります。それだけの価値があると判断すれば、アナリストは早晩調査対象に加えたいと考えるものだから、です。では、IR活動において、果たしてそれを意識した情報発信はなされているでしょうか。例えば、「ウチの会社は面白い」「ウチの技術は高水準だ」「ウチの製品は成長が期待できる」といった、やや抽象的で主観的な説明や情報発信にとどまってはいませんか? 会社が面白いとしても、それは他社と比べて何がどれだけ違うのか、その面白さが企業価値にどれだけ繋がっているのか、その面白さは継続性があるのか、アナリストは必ずこういう視点を持って企業を捉えます。そして、この視点に対する回答が情報発信の中にしっかりと含まれることで、それがアナリストに「会社の本当の面白さ」を認識させ、調査の必然性を感じさせることに繋がっていくことになるでしょう。これらは特効薬ではありませんが、こういった定量的かつ客観的な情報発信の積み重ねが、徐々に定点観測をするアナリストの数を増やして行く事になるはずです。情報発信と一括りされる傾向はありますが、その視点や中身次第で、アナリストへの訴求力は全く異なってくることをご理解いただきたいと思います。

貴社のIR活動は機能していますか?と題した本コラムの第2回は参考になりましたでしょうか。次回は、「機関投資家やアナリストと説明会などで接触回数を増やすには?」についてお話ししたいと思います。

(長井 亨)

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