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2016年5月19日

統合報告書は企業価値を高めることができるのか? (第1回)

統合報告書というフォーマットがいわば「輸入」されて、3、4年が経つ。この間、多くのIR担当者から受ける質問が統合報告書の内容に関するものから、自社でどのように取り組んでいったらよいのかという、実践的な質問に変わってきたように感じる。

2016年4月19日、一般社団法人日本IR協議会(JIRA)は、全上場企業を対象とし同年1月~3月に実施した「IR活動の実態調査」を発表した。その中でIR支援会社への期待として、「アニュアルレポート(AR)・統合報告書の作成」がトップに上げられていたことは、私の印象を裏付けているし、IR担当の方々の関心の高さを表している。

実際JIRAが実施した昨年の調査では、2014年に統合報告書を作成している企業は86社とあり、2016年初頭日本経済新聞では統合報告書を作成する企業が250社を超えるようだと報道している。日本企業が統合報告書を重視し素早く取り組んでいることを証明している。

しかし、日本企業にとって統合報告書は法的に定められた制度開示ではない。なぜこれほどまでに取り組もうとしているのであろうか。それは、日本の証券市場の取引高の約7割を占める海外の機関投資家が非財務情報を注視していることに関係しているだろう。また、国連が提唱する国連責任投資原則(PRI)に署名する機関投資家が世界で287、運用機関907、運用資産残高が約7,300兆円に達していることも大きな要因であろう。

では、海外投資家の満足を得られる統合報告書とはどのような内容で構成すればよいか。非財務情報として何を開示するか。ESGで何を語るか。どのように情報を見せると効果的か、などいろいろな悩みが出てくるから、冒頭の質問を受けることが多くなる。

その解決策のひとつとして上げたいのが、英国IR協会編纂の『IRベストプラクティスガイドライン(当ガイドライン)』である。なぜなら、当ガイドラインは機関投資家がツールを通じてどのような情報を知りたいかという視点でまとめられており、当ガイドラインは、まさに海外の機関投資家の意向が反映されているのである。

当ガイドラインは、AR、ウエブサイト(IRサイト)、ソーシャルメディア、オンラインプレゼンテーションから構成されており、統合報告書については、ARに関するガイドラインの中で触れられている。というのは、英国企業は、2006年英国会社法によって財務・非財務のKPIの設定や、財務報告評議会(Financial Reporting Council:FRC)が提唱するStrategic Reportによってビジネスモデルと戦略の記載をARに要請されており、財務・非財務の情報開示が進んでいることがあげられる。

弊社では、PFP(Project Future Proof)の設立に参加するとともに、当ガイドラインの日本語版の作成に関与しており、日々IRの現場で活躍される皆さまのお役に立てるものと自負している。

次回以降では英国企業の開示情報を踏まえながら、機関投資家が期待する点を明らかにしていきたい。

(株式会社ファイブ・シーズ 代表取締役 越智義和)

http://www.fivecs.co.jp/

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