最近のIRの話題
- 2016年9月26日
-
いま株主・投資家に求められるIRサイトのあり方とは?(第3回)外国人投資家に評価されるIRサイトとは
株主・投資家目線で見た解りやすさを向上させ、さらに発信側(企業)、受信側(さまざまな属性の株主・投資家)双方の利便性を高めるにはどうすべきか。―――前回まではサイトの利便性、発信内容のあり方から考えてみました。
今回は、ズバリ、外国人投資家に評価されるIRサイトとはどういうサイトなのか、に迫ります。重要なポイントを下記3つにまとめました。
1) 自社の特徴はもとより市場環境などもわかりやすく示す必要があります。
2) 最新業績データの開示はもちろん、それぞれ必要な情報へたどり着きやすい構造へ工夫が重要です。
3) 投資家が"自分が大事にされている"と思えること―――Investorサービス精神という発想が大切です。
以下、順に要点を列挙します。紹介した事例は、実際、外国人投資家からの評価が高いとされています。
1)自社の特徴はもとより市場環境などもわかりやすく示す必要があります
一部の有名なブランド企業を除いて企業の多くはグローバルな市場においては残念ながらよく知られた存在ではありません。さらにドメスティックな事業が主な場合は、その国固有の市場の特徴なども、外国人投資家に対しては説明が必要なケースも多々あります。したがってまず「何の会社か」、そして商品やサービス、マーケットの状況(市場環境や競合、シェアなど)などもわかりやすく示す必要があります(日本語で作った個人投資家向けのコンテンツを英語サイトに流用する際にもこの点に配慮します)。
以下に要点と事例を列挙します。
- 財務などの情報開示だけなく、投資家が企業を知るための「About us」や「事業紹介」コンテンツを充実させる。
Bayer: http://www.bayer.com/en/Bayer-Group.aspx
Vodafone: http://www.vodafone.com/content/index/investors/about_us.html
- 企業の戦略や強みを分かりやすく説明し、投資家がビジネスモデルや企業ミッションを理解しやすくする。
Eni: https://www.eni.com/en_IT/investors/strategy.page
- 企業の業績や財務状況を知るため、最新のアニュアルレポート、財務開示情報を分かりやすくアクセスできる。また、最新財務を分かりやすくまとめ、図表・チャートで、ビジュアル化する。
- 経営者情報、ガバナンス、組織構造をできるだけ詳細に。役員とボードメンバーの個人情報や経歴だけなく、ポジションに相応しい能力と権威を納得させるように説明する。また、ガバナンスのポリシーや報告など、PDFでダウンロードできるようにする。
GE:http://www.ge.com/about-us/leadership/jeff-immelt
Eni:https://www.eni.com/en_IT/company/governance/board-of-directors.page
- 「株主メモ」や「電子公告」など外国人投資家にとっては耳慣れないものをそのまま翻訳せずに理解可能な用語にする。
2) 最新業績データの開示はもちろん、それぞれ必要な情報へたどり着きやすい構造への工夫が重要です。
一般のコーポレートサイトにおいても必要なことですが、時間の無い投資家に情報を開示する際はとくに最新の業績など、投資判断に必要な情報にただちにたどりつくようにする工夫は必須です。
以下に要点と事例を列挙します。
- 各カテゴリの情報を階層化し、選択肢をシンプルにする。
GE:http://www.ge.com/investor-relations
- 最新の財務情報(詳細)へアクセスしやすくする。
- 過去のアニュアルレポートと四半期レポート、財務データ(excelなど)が探しやすく、まとめやすくする(アナリストがモデリング・分析用)。
Citigroup:http://www.citigroup.com/citi/investor/qer.htm
ING:https://www.ing.com/Investor-relations/Results-Interim-Accounts/Quarterly-Results.htm
- IRイベントのネット放送(イベントに参加できないアナリストに便利)、プレスリリースなどのコンテンツを適時開示する。
3) 投資家が"自分が大事にされている"と思えること―――
Investorサービス精神という発想が大切です。
ここまで見てきたように、やはりIRサイトという以上、主たる利用者である投資家に対して、できるだけ理解しやすく端的に、必要な情報にたどりつきやすく、そして親切に情報を開示することが重要です。当たり前のようですが、この観点で各社のIRサイトを見て、その工夫によって評価に差はつくのではないかと考えます。
以下に要点と事例を列挙します。
- サイトのトーン、表現を親切にする。
Sanofi:http://en.sanofi.com/investors/indiv_shareholders/indiv_shareholders.aspx
- 充実なFAQ、グロッサリー、IRイベントをカレンダーに追加するツールなど、シェアホルダー向けのコンテンツを整備する。
L'Oreal:http://www.loreal-finance.com/eng/shareholders-corner
- 電話での問い合わせ先やなどの連絡情報を掲載して対応する。
以上、三回にわたって株主・投資家に求められるIRサイトのあり方を考察してきました。ご参考になれば幸いです。そして、さらなる工夫によって評価向上を図りたいという方は、ぜひ日興アイ・アール、ならびに当社にご相談ください。
(株式会社ブレーンセンター取締役 中村 佳正)