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- 2018年7月31日
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改訂コーポレートガバナンス・コードとEVA®経営システムによる対応の意義(下)
EVA®:SternStewart&Co.の登録商標
EVA®経営システムの社員にとっての意義
今回は、EVA®経営システムについて、社員やESG等との関わりについて説明します。
EVA®経営システムの導入は株主だけでなく、社員にとっても意義がある。実際の財務、社員行動、経営戦略をEVA®ツリーとして以下のように整理して相互の関連性をロジカル、かつ定量的に把握することが可能である。
EVA®経営システムは、時価総額と直結する「株主価値」と経営戦略と整合的に整理し「価値創造の見える化」を体系的におこなうため、全ての活動を簡単に理解することが可能になる。まさに以上の枠組により、原則5-2に十分に対応できよう。
EVA®とESG対応・統合報告書
ESG報告の観点でみても、EVA®はすべての経営活動を企業価値にむすびつけて整理するので、非常によいツールになる。通常のESG報告書は、環境対応、人材育成などが独立して論じられており、企業の本来の目的「特定の社会ニーズを満たすために体系的組織的な営み」との関係がすぐに理解できないリスクがある。
EVA®ツリーで、ESGの活動を「特定の社会ニーズを満たすために体系的組織的な営み」とリンクさせて論じれば完璧に整理ができる。
EVA®経営=ESG経営と直結するという形で対応すれば、ESG報告書でなやんでいる企業等に対し一つの道すじが示せる。
そうした形をまとめれば以下のように統合報告書への展開も容易となる。
EVA®をベースにした企業価値理論を用いた統合報告書への展開
EVA®とMiFIDⅡ対応
2018年1月から、欧州では、MiFIDⅡという規制により、セルサイドの証券アナリスト業務の対価を明確化することでセルサイドへ証券アナリスト業務のコストダウンがすすみ、セルサイドアナリストレポートが大幅に減るといわれている。その影響は日本にも及ぶといわれている。EVA®経営システムをベースに企業の開示を強化することでアナリストレポートの量の低下をある程度補えるという対応も容易になる。
なにをすべきか?超過利潤の価値の計算からまずは始める
資本コストを生かした経営を導入するための第一歩はまずはEVA®、超過利潤を計算することである。営業利益×(1-実効税率)-(株式簿価+有利子負債)×5%でまずはプラスかマイナスかを計算してみるとよい。マイナスであればどうプラスにしていくのかが今後問われてくることになろう。
(ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社 代表取締役 宮下 修)