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2016年8月24日

いま株主・投資家に求められるIRサイトのあり方とは?(第2回)投資家が求める情報をわかりやすく発信するために

株主・投資家目線で見た解りやすさを向上させ、さらに発信側(企業)、受信側(さまざまな属性の株主・投資家)双方の利便性を高めるにはどうすべきか。―――前回はサイトの利便性から考察しました。

今回はその発信内容のあり方から考えてみます。

1) 概要と詳細のすみわけが必要です

株主・投資家が企業の情報を収集するにあたっては、短時間で概要を把握したい場合と、じっくり分析したい場合があります。

したがってIRサイトにおいて、「概要情報はわかりやすく端的に」「詳細情報についてはしっかり網羅して探しやすくする」ことが大切です。そこでまず、とくに昨年来の動向をふまえて実際に当社が提案した経験から、その要点をお伝えします。

2) 概要情報では簡潔な情報をわかりやすく、魅力的に

IR情報に初めてアクセスした投資家には、直近の財務情報と戦略の概要と要点が短時間でわかる「ダイジェスト」的な報告のニーズがあります。これは多くのIRサイトにおけるリニューアル前後のアクセス状況から判定できます。

この際、ビジネスモデルや強み、市場環境などを、インフォグラフィック(情報、データ、知識を視覚的に表現したもの)を活用するなどしてわかりやすく魅力的に伝えることが有効です。

そして、時間のあるときにしっかり読もうとする方にとって、年次報告書(アニュアルレポート)をはじめとするまとまった資料については、その内容を画面上にHTML化して掲載する/しないに関わらず、ダウンロードしてローカル環境で閲覧したいというPDF版のニーズもあります。その際にも直近情報の一括ファイル、各報告書の全ページ、さらにそのコーナーごとにダウンロード可能にしておくなどの細かな配慮もすることでより親切な情報開示だと受け止められる効果があります。実際にアクセスの結果を分析しても、細かな配慮をした方が、よりアクセス数や参照数が増えるという効果も表れています。

3) コーポレート・ガバナンス情報充実のさせ方

2015年のコーポレート・ガバナンス・コード導入以来、ガバナンス強化のありようを知りたい、というニーズが高まっているため、ガバナンス報告書やポリシーなどへ、直ちにアクセスさせる工夫も必要になっています。

また社外取締役の紹介やコメント、経営陣の対談などを掲載する企業も増えました。これらの工夫は透明性が高い印象を与えるためにも有効です。

上場企業であれば必ずできる工夫として、すでにコーポレート・ガバナンス報告書や有価証券報告書では記載されている役員の経歴や役割、プロフィール(専門性のわかるもの)を画面で掲載することは、それが無いこと自体が透明性を欠く、あるいはガバナンス強化に消極的とも受け取れますので注意したいところです。

4) 動画・映像の活用

前述のように、コーポレート・ガバナンスへの意識の高まりを受けて、日本でもこれまで以上に経営層への関心が高まってきています。

海外企業では、マネジメント層が自分の言葉で業績や戦略を語るメッセージを映像化している例も珍しくありません。生の声や姿を通じて人となりも熱意も伝えることができる点で映像は有効だともいえます。

また、まだまだ事例は多くありませんが、新たに投資した施設や、獲得・開発した技術、新製品やサービスの特長などを動画で紹介するなども有効です。ただし、ここで留意したい点があります。ご承知のように映像技術も日々進化していますので、ただ動画・映像があれば良いというわけではありません。あまり手をかけていない動画ではかえってがっかりさせることもあります。従来以上に撮影や編集を工夫した動画とすることでその投資の意義に対する理解を深め、将来の成果への期待を高めることにもつながる点で有効だともいえます。

5) コーポレートサイト全体がIRサイト

株主・投資家目線からのサイトのあり方を考える際に、つい盲点になりがちな点ですが、投資家が見るのはIRサイトだけではありません。もちろんIRサイトで、必要とされる情報をワンストップで提供する機能は必要です。ただし、さらに深く貴社を知りたい人にとっては、企業情報やサービス・製品情報なども含めたコーポレートサイト全体が投資判断の情報源になるともいえます。

そして、短期的な業績のみならず、中長期の成長戦略を重視する投資家も増えており、経営とサステナビリテイを関連づけた情報発信も重要になりつつあります。

とくに、2015年秋に国連で採択され、わが国もその実現に対する協力に同意したSDGs(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ※)への対応なども意識して、コーポレートサイト全体での情報発信を充実させていくことも望まれています。このことを実践するにはサイト内の各コーナーの主管部署との協力が必要ですが、IRサイト運営側からの働きかけは大きな力になることが多く、全体最適によるコーポレートサイト全体の質の向上は企業ブランディング効果を高めることにもつながります。企業を見る目が年々高く、厳しくなっていることもあり、サイト全体の質を評価される時代になったと言えます。

※SDGs(Sustainable Development Goals:サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)

2015年の9月25日-27日、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(英語 ・日本語(外務省仮訳) )が採択されました。このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげました。この目標が、ミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)の後継であり、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」です。企業に対しても2030年をターゲットとする持続可能な開発の目標をビジネスアクションに取り込むことが要請されています。

参照)国際連合広報センター

http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/
sustainable_development/2030agenda/

さて次回は「外国人投資家に評価されるIRサイトとは」を考察します。

(株式会社ブレーンセンター取締役 中村 佳正)

http://www.braincenter.co.jp/

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