アナリストのつぶやき

2016年4月 1日

投資家とのキャッチボールの重要なツールである決算・事業説明会と説明会資料

東京証券取引所及び金融庁による、スチュアードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの普及・定着に向けた取り組みにより、投資家向けに決算説明会や事業説明会を開催しようとする上場会社が増えているそうです。アナリストにとっても、投資家にとってもとてもありがたいことです。決算短信や有価証券報告書などの定型の情報だけではなかなか把握できない会社の事業内容や事業戦略について知る機会となるからです。

すでに全上場会社数が3,500社を超える中で、証券会社や調査会社から発行されている企業レポート数は4割程度の約1,400社にも満たないのが現状です。大手上場会社であれば複数の証券会社のアナリストがカバーしているかもしれませんが、それ以外では証券系のアナリストにレポートを書いていただくことがあまり期待できない状況にあります。そのため会社側からみると、決算説明会は、直に投資家やアナリストと話し合える場所であり、説明会資料は、会社側から投資家に伝えたいことを表現できる手段となります。

残念ながら、これまでの慣習から説明会の開催や資料の作成を行っている会社が散見されます。決算短信を焼き直すだけの説明や資料では、せっかくの機会を無駄にしていると言えます。会社側にとっても、投資家にとっても、時間や費用の浪費でしかないのであれば、逆に開催しないほうがいいと言うことになります。説明会や説明会資料の作成に対する会社側の対応方法は、ビジネスの基本と同じではないでしょうか。つまり、対象とする顧客、この場合は投資家やアナリストのニーズを把握して、対応することを考えればいいはずです。

説明会に参加する投資家やアナリストのニーズは大雑把に言えば、①会社を理解し、②現状を把握し、③将来を予測すること、であり、そのための情報を収集することであります。会社を理解するとは、業界での位置づけや強み、弱みなどを理解することであり、現状を把握するとは、市場動向や会社の収益構造を理解することであります。将来を予測するとは、会社の事業戦略、中長期の計画を把握し、自分なりの見通しを出すことです。

つまり会社側としては、会社の実態をきちんと投資家に伝えることが重要だといえます。SWOT分析である弱点(Weaknesses)や脅威(Threats)など、会社側としてはあまり言いたくないことでも、きちんと経営陣としての対応や考え方を示すことが必要と考えます。説明会および説明会資料は、会社が投資家と対話するためのツールであります。投資家もアナリストも自社のサポーターになって頂こうとの気持ちで、上場会社の皆さん、ぜひ投資家、アナリストとの対話を楽しんでください。

(山川 学和)

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