アナリストのつぶやき

2017年3月31日

貴社のIR活動は機能していますか?(第6回・最終回)

「IRコンサルティングの選び方」

「IR活動はきちんと機能していますか」を題材に、これまで幾つかコラムを書いてきました。今回は「IRコンサルの選び方」についてまとめ、一旦この題材に関するコラムを締めたいと思います。前回、IRコンサルへの満足度が低い場合の一例として、IRコンサルの能力に問題があるケースに言及しました。事業会社としてはコンサル報酬を支払う以上、よりクオリティの高いコンサルタントに担当してもらいたいと考えるのは当然です。しかし、その技能に関して明確な比較基準が存在しているはずもなく、相手のセールストークを信じての契約とならざるを得ないのが実状でしょう。その結果、契約が「ハズレ」であったという苦い経験をなされた方もおられるではないでしょうか。今回はそういったリスクを抑制できるような「選び方」を考えてみたいと思います。

結論を急げば、失敗しないIRコンサルの選び方は、その得意分野、不得意分野を見極めることにあると考えます。IRと云っても様々な業務があります。コンサルに期待する提案も広範な分野にならざるを得ないのですが、全ての分野において「知識と経験をふんだんに保有し」「最新情報を入手し」「事業会社のIR方針に沿ってオーダーメイド化する」ことが容易でないことは想像に難くありません。もちろん、プロとしてIRコンサルも全方位的な対応をすべく体制を整えていることは間違いありませんが、技量に濃淡が生じるのは致し方ないでしょう。であれば、ヘルプを依頼したい分野を得意とするIRコンサルを選ぶことにより、より高いクオリティのサービスを受ける可能性が高まり、所謂「ハズレ」契約となってしまうリスクは抑制できるはずです。そのためには、まず事業会社側において、特にどういった分野にヘルプを依頼したいのかというIR方針を明確にして臨むことが不可欠です。漠然とIRサポートと捉えてしまうと、焦点が絞られていない分、IRコンサルの見極め基準がぼやけてしまうことになりかねません。

では、焦点を絞り込んだうえで、各IRコンサルの得意分野・不得意分野はどうやって見極めればよいでしょうか。筆者はそのIRコンサルの出身業界を参考にすることをお勧めします。証券会社、銀行、戦略コンサル、監査法人、広告会社、出版会社など、思いつくだけでもIRコンサルの中でもこれだけ出身業界に違いがあります。さらには、元IRパーソンが経験を売りにコンサルとして独立したという例もあります。当然ながら、証券出身であれば、市場というものの機微や投資家の思考プロセスに一日の長があるでしょうし、監査法人出身であれば、バリュエーションや会計的なアプローチには強い自信を持っているでしょう。元IRパーソンであれば、実践の強さは折り紙つきかもしれません。これら出身業界を比較して、IR部隊として優先的に注力したい分野を軸にコンサルを選んでいくことが、「ハズレ」を引くリスクの抑制策になるものと考えます。そして、そこで高い満足度を得たならば、他の分野においてもそのコンサルと継続取引で対応するのも一つです。既にそのクオリティの高さは実証済みですし、発行体への理解が既に深まっていることは重要な安心材料です。そこまでの関係を構築できれば、IRコンサルは力強い「トレーナー」として機能することになると考えます。

6回を数えたこのコラム連載はいかがでしたでしょうか。理想と現実のギャップに悩まれるIRパーソンに向けて、少しでも参考になれば、との想いでコラムを書いてみました。どれだけお役に立てたかはわかりませんが、少しでも考えを整理するきっかけとしていただければ幸甚の極みです。

(長井 亨)

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